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#丸一日遅れました、ごめんなさい(つД`)
◆霧の深い昼に
ジャンル…MapleStory/無印
形式…小説
【注意】テーマ性の無い流血(猟奇)話です。大丈夫な方だけどうぞ
タイトルが思いつかなかったので「清々しい朝に」に対比させてみた。
最早原文が二行しか残っていないという……。後半適当&見直ししていないためおそらくミス大量だと思います。先に謝っておきます、ごめんなさいorz
体が、血が、そして心臓がざわめいた。
男がうっすらと眼を開くと、何時の間にか辺りは白い霧に包まれていた。
一体何時間眠っていたのであろうか。ただ、世界が闇ではなく白である事から察するに、おそらく今は未だ昼、せいぜい数時間であろう。
男が纏っているのは、ずっしりと重みのあるオリエンタイカンとプレニット。彼の傍らにあるのは眩しすぎるほど黄色い斧、ライジング、そして……布を巻きつけた大きな荷物。
自らの格好を見て、男は小さく舌打ちをした。
――駄目だ、この格好では。
霧は段々と深くなってゆく。始まりはぽつりぽつりと、そしてやがて大雨が降り始めても、ざわめきは止まなかった。彼は雨を浴びながら、傍らの荷物を引き寄せ、丁寧にその布を巻き取った。
布の中から現れたのは、彼の格好とは不釣り合いなダンカと呼ばれる片手斧であった。だが、それが纏うのはとてつもない程の妖気にも似た禍々しい雰囲気であった。
不意に、彼の目が緑の固まりを捉えた。その固まりは霧の奥からどんどんと男に近づいて来る。彼はそれから目を離すこと無く立ち上がり、布を地へと落とし、そしてゆっくりと歩みを進めた。
その緑の固まりは、どうやらカッパードレイクのようであった。その一対の目は男側からははっきりとは見えないものの、完全に捕食者の目をしているように男には感じ取れた。何故なら……彼もまた同類だからである。
にやり、と彼は確かに笑った。その笑みは、レベルの差から来るものではない。それは、そのモノの中に秘めた、言わば獰猛な「本能」の差から来るものであるである。
カッパードレイクは彼の目を見ず、突進を仕掛けてきた。だが男は、寸前のところでそれを避ける。カッパードレイクは、数分前まで彼がもたれ掛かっていたその場所へと突っ込もうとしたが、その頭が壁へとぶつかる事は無かった。男が、両手でダンカを力一杯振り下ろし、カッパードレイクの首を切断したからだ。初級ソードマン向けのダンカにも関わらず、たったの一撃で。
頭脳を失ったその体は、数歩進んだかと思うと、大きくよろけ、そして岩にぶつかること無く地面へと倒れた。一足先に地に着いた頭は、驚きの表情でその体を見つめていた。
男は無表情で体の方へと近づき、痙攣するその体の、腹部へとダンカを突き刺した。その体は、以前首のあった場所からも、そして腹部から血を流しながらも尚、痙攣を続けた。だが、やがて電池が切れたようにだらりと動かなくなった。
――やはり、物足りない。
尚も無表情で彼はダンカを引き抜いた。辺りはもう真っ白で、数メートル先が見えない状態となっていた。
男はぼんやりとその世界を見つめていたかと思うと、不意に岩の方へと戻り、ダンカをライジングの隣へと立て掛けた。と思うと、何を思ったのか男はプレニットをその前へと投げ捨て、更にオリエンタイカンを脱ぎ始めた。金属の擦れ合う音のみが世界に響く。そして、その鎧をどさりとライジングの隣へと降ろすと、男は再びダンカを握りしめた。
ダンカが無ければ、職もレベルも解らない状態であった。
彼は、また笑った。それは冷たい狩人、いや、「捕食者」の顔であった。
食物を喰らう事が体の食事なら、「捕食」する事は、彼にとっては「精神」の食事と言っても過言ではなかった。
男は一度だけ肉の塊と化した「被食者」を一瞥すると、薄ら笑いを浮かべながら街の方へと歩いて行った。
大雨、加えて濃い霧に包まれたペリオンの街に、人影は見あたらなかった。
だが、男には都合がいい。
水滴をその髪にしたたわせ、彼は尚も薄気味悪く笑いながら歩き続けた。
やがて、彼の「感覚」が一人の人間の気配を捉えた。彼の目が、完全なる捕食者の眼となった。
男は血を蹴り、自らの感覚を頼りに一直線に走り出した。男の目が、その者の姿を捉える。その大男は、男に背を向けた状態で歩いていた。
男が大男へとダンカを振り下ろそうとしたその刹那、ガキンという金属音が響き渡った。大男が、男のダンカをその黒い剣で受け止めたのだ。
大男のその剣は、ナイトやクルセイダーが持つ剣の一種であった。少なくとも、男よりもレベルが高いのは確実である。
だが、男は表情一つ崩さずに大男の顔を見つめ続けた。その顔は、狂った人間のそれであった。モンスターの、とりわけ獰猛な種族のような。焦りも動揺も一切無いその表情を見て、大男の方の顔が恐怖で引きつった。
不意に男が斧を引いた。だが、大男がそれに対応する間もなく、ダンカの刃は剣を散らさんとばかりに黒い刃に襲いかかり、その剣は宙を舞い、そして大男から離れた場所へと落下した。
大男の顔は、最早戦士ではなく弱者の顔となっていた。飛びさった剣と男の顔を見比べて、彼は後ずさりし、叫んだ。
「た、助けてくれぇっ!」
男は一目散に逃げ出した。この濃い霧と雨の中である、大男の姿はすぐに見えなくなった。
だが、男にはそんな事は関係無かった。ただ、自分の本能と感覚を頼りに、再び男は駆ける。まるで、盗賊と見紛うかのように。
大男は霧に何とか紛れ込めたが、男もまた条件は一緒であった。一瞬のうちに大男の目前に現れると、男はその手に持つ斧を力一杯水平に振った。恐怖の貼りついた大男の顔が、宙を舞った。
両手をだらりと下げ、男は首を失った男の体を見下ろした。そして、男は小さく笑いだす。その声は次第に大きくなり、やがて彼は、空を見上げて高々と笑っていた。