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【No.203】 2007.12.20 / 13:45 | 創作物

■ 作品消化祭:十四日目

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#なかなか元のペースに戻らない……orz

◆「他称」と「自称」(2/3)
ジャンル…MapleStory/無印
形式…小説

 カニバでの新キャラの話。
 ほぼ完全に実在キャラそのままなんてそんなそんな(※主人公一人だけの話+性格は若干改変済。こんな露骨な奴とはむしろ俺がやりたくねーです。

続き


 試合開始の合図と同時に、彼は開かれた入り口から飛び出し、そして最下段へと飛び降りた。
「ふぅ……」
 着地をした彼が目の前を見ると、其処にはロムバード、正確にはロムバードモドキが一体。
 彼は落ち着いた様子で、愛用のナックルメイスにブースター――青い疾風を纏わせる。
「いくか……」
 にやりと笑って、彼はロムバードに向かい走り出す。
 小さな人間を視界に捕らえたロムバードが、彼に向かいその大きな腕を振り下ろす。寸前の所で、彼は飛び上がった。盗賊程では無いにしろ、戦士にしては十二分のジャンプ力であった。
 彼はナックルメイスを、ロムバードの前部へと振り下ろす。バコン、と不吉な音が鳴って、振り下ろされたその場所は凹んだ。
 よろめいたロムバードに、着地した彼はナックルメイスを打ち付ける。遠心力の力さえも乗せたその攻撃は、確実にロムバードへとダメージを与えていた。
 数度、彼はそれをくり返す。左腕と両足を破壊されたそれは、やがて音を立てて崩れ落ちた。搭乗していたブロックパスも、目を回してそれから落ちる。
 やがてロムバードはその場から姿を消した。いくら本物に近くとも、所詮モドキ、所詮ゲーム。
「よし、これで六ポイント」
 レベルの割には時間がかかったが、片手戦士でこれなら十分。彼は自分にそう言い聞かせる。
 そして、目の前から更にロムバードがやってきた。後ろを振り返れば、其処にもロムバード。だが、強敵も彼にとってはポイントという餌に過ぎない。
「やっぱり、久々のカニバは楽しいな」
 笑みを浮かべ、彼は目の前のロムバードに飛び乗った。
 唐突に目の前に来た敵に、思わずブロックパスモドキは狼狽する。だが、ブロックパスが行動に移す前に彼はロムバードの背後へと飛び降りた。
 ロムバード達は揃って彼に向かい、衝撃波を放とうと腕を振り下ろした。
 流石の彼も、盗賊では無いのだ。着地してジャンプして避ける事は出来ず、衝撃波は彼に直撃した。
「ちっ……ま、まぁ、そうこなくちゃな……!」
 ロムバード達の方を睨み付けて、彼は呟くようにそう言う。
 だが、彼はある物を見つけ、そして初めて焦りの色を顔に乗せた。
「……っておい!」
 ロムバード達の頭上に浮かんでいたのは、ある一つのマーク。相手チームに俊敏力を上げるスキル――回避率アップの守護物を召喚されたことを示す証。回避率の底上げをされてしまうと、戦士の彼にはどうしようもない。
 どうやら、相手は馬鹿では無いらしい。
 立ち上がり、彼はロムバードから逃げるように駆け出す。ショートパンツのポケットから何かカードのような機械を取り出すと、ピンク色のボタンを押して叫んだ。
「頼む、近くに守護があれば誰か破壊してくれっ!」
 守護物が召喚されるのは、アルファロボの居る中段、上段。彼の居る下段からはあまりに遠すぎる。
『了解、とりあえず上段から探すわっ』
 そう答えたのは女性の声。少年の声は、全く反応がない。
「ありがとうございますっ」
 機器をポケットへと放り込み、彼は走り続ける。一匹また一匹と、彼を追いかけるロムバードは数を増していった。
 梯子さえも無視して、彼は走り続けた。彼はジャンプ力こそ多少あれど、足はさほど早くはない。ただ、体力だけはあった。
 そんな彼が、幾つ目かの角を曲がった瞬間に足を止めた。
 彼の目の前に居たのはロムバードと、少年であった。
 つい、溜まった苛立ちが爆発して。
「あんたレベルは三十ちょっとだろっ?なんでこんな所に居るんだよっ!」
「っるさいなぁ。僕が何処に居ようが僕の勝手だろうっ?」
 鬱陶しそうに返す声に更に苛立ちはつのり、勢いで彼は言った。
「じゃあ聞くが、ロムバードに攻撃は当たったのかよ?」
「それは……」
 少年は、黙り込んだ。ふぅ、とため息をついて、彼は言う。
「勝ちたい勝ちたいーって言っても、全く歯が立たない敵に突っ込んでいっても勝ちから遠ざかるだけだろう?初めてじゃないって言ってたよな、じゃあロボ倒して少しでもポイント稼ぐ方がいいって分かるよな?」
「あ、あぁ……」
「じゃあ中段を担当してくれ。クレリックさんが上段に居るらしいから」
「……分かったよ」
 幸いにも梯子は目の前にあって、少年は渋々と梯子を登っていった。
「……さて、と」
 言い過ぎた、と彼は唇を動かした。
「また感情的になりすぎて……大人げないってまた弟たちに馬鹿にされるな……」
 理論的に説明できず、つい感情的になってしまう。全くもって、駄目な点である。
 彼の見つめるその先には、少年が対抗しようとしていたものも含めて、ロムバードの数は六体にもなっていた。
 ふぅ、と息を吐いて、改めてロムバード達を見つめる。
「守護が外れれば一気に仕掛けられるが……攻撃無効を召喚されない事を祈るのみ、か……お?」
 不意打ち的に、ロムバード達の頭上から、あの忌々しいマークが姿を消した。
『破壊したわよっ』
 クレリックさんの声がポケットから聞こえる。
「ありがとう!」
 ポケットに向かって叫んで、彼はロムバード達の方へと駆け出す。だが、今度は飛び上がる事無くそれらの前で立ち止まり、ナックルメイスを構えた。
 彼に向かって振り下ろされるいくつもの腕、それが地につく前に、彼は覇気を込めた叫びをあげながら、薙ぎ払うようにナックルメイスを振った。メイスは赤い輝きを帯び、赤い光を散らしながら、前方へと衝撃波を放つ。
 戦士の複数攻撃スキル、スラッシュブラスト。
 息をつく暇もなく、その反動に乗せて彼は一回転し、今度はナックルメイスを振り下ろす。そこから放たれる衝撃波をうけ、ロムバード達は後ろへと引き下がった。しかし、スラッシュブラストの攻撃力はさほど高くはない。加えて、後ろに居るもの程ダメージは少ない筈である。
 だが、流れをこちらへと動かすには十分だ。
 一番近いロムバードに向かって、彼は渾身の一撃、パワーストライクをぶつけ、そしてマントをなびかせもう一撃お見舞いする。そして彼は飛び上がると、最初に遭遇したそれにしたのと同じように、前部に向かってメイスを振り下ろした。ロムバードは彼が着地すると同時に崩れ落ち、そして消えた。
 次々と襲い来るロムバード達に向かって、彼はただナックルメイスを振り続けた。ロムバードの群れが居なくなるのは、すぐだった。
「ふぅ……これで四十六ポイント……か?しかし先は長いな……」
 残された大量の薬の内の、一本のエリクサーを掴み、飲み干す。好きでやっているとはいえ、流石に防御力皆無のこの格好でロムバードの群れに挑むのは、少々辛い。
「よーっし、早いところ溜めてやるかっ!」
 そう言って、彼は走り出した。

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