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【No.210】 2007.12.24 / 01:00 | 創作物

■ 作品消化祭:十八日目

※ラインナップ、詳細はこちら

◆Between The Illuminations
ジャンル…オリジナル
形式…小説


 一話完結物。本当は前後編になる小説を書こうと思ったのですが、書き出しを書いた時点で面白く感じられなかったので変更→別の話を書き出す→やっぱり面白く囓られない→… って流れをここ数日で4,5回程くり返してなんかもうどうでもよくなった。

 後、タイトルの綴りが合ってる気が全くしない。

続き


 イルミネーションとイルミネーションの間を繋ぐ、一つの大きな橋の上で。
「やぁ」
 自転車で通りがかった背の低い少年が、大橋から唯々川を見つめている少年に向かって、声をかけた。
「……今、何時だと思ってるんだよ」
「九時四十七分三十二秒」
「秒数は適当に言っただろ、今」
 自転車の少年は軽快に笑い、自転車から降りて少年の左横へと並んだ。ふぅ、と大きな息を吐いて、元から居た少年は言葉を吐いた。
「こんな時間までどうしたんだ、塾か?」
「まーね。一応受験生だしね。……翔は?」
 翔と呼ばれた少年は、顔を腕に埋めて言った。
「べっつにー。何となくここに来て、何となく黄昏れてただけだよ」
「あぁ、今日はクリスマスイブだからね」
「うっせー!」
 自転車の少年はからからと笑った。それが気に入らないように、翔と呼ばれた少年は言葉を投げた。
「そういう悠だって、別に彼女とか居る訳じゃないじゃねーか」
「ん、僕はいいんだよ。別にまだ興味なんて無いからね」
「あぁーっ、お前のそういう余裕っぷりが腹立つっ! 俺がこんなに憂鬱に浸っているっつーのに!」
 翔はそう叫びながら、自らの髪を逆撫でた。その様子を見て、悠と呼ばれた少年はまた笑う。
「別にそう焦らなくてもいいじゃないか。大学に合格出来れば出会いも増えるって」
「またさりげなくお前は、俺の一番の憂い事を思い出させやがって」
「仕方ないじゃないか。現実にも立ち向かわなきゃ」
「そりゃそうだけどさぁ」
 それっきり二人は黙って、唯、畔を見つめていた。両岸からのイルミネーションの輝き、そして次の輝きを反射するそれは、一度だって同じ表情を見せる事は無い。それはまるで、生き物のようで――。
「嗚呼、隣に居るのが悠じゃなくて女の子なら、どれだけロマンチックな事か」
「親友に向かって失礼だね、一人じゃないだけマシと思って欲しいよ」
 わざとらしく愚痴を吐く翔に、悠はクールにそう返した。
 不満げに、翔は言う。
「そりゃいつもならそうだけど、今日はイブだからねぇ。流石にそういう希望の一つでも吐かなきゃやってらんねーよ」
「女装でもしようか?」
「阿呆」
「冗談さ」
 そう言って、悠はまた笑った。翔もまたつられるように小さく笑う。
「いや、でも見て見たいかもしれねーな、悠の女装姿。並んで歩くのは勘弁だけどな」
「勘弁してくれよ、女装なんて。むしろ翔がやればいいんじゃない?」
「俺だって勘弁だ」
 そんな二人の会話を割り込むように、唐突に幼い声が聞こえた。
「よ、寂しそうな馬鹿共。男二人で何やってんだ」
 思わず二人が振り返ると、其処に居たのは人形みたいな童顔の少女であった。
「何だ、綾かよ……」
「何だって何だよ!」
 わざとらしくため息を吐く翔に、少女、綾は怒鳴りつける。
「まーまー、落ち着いて」
 微笑を浮かべながら、悠が仲裁に入った。だが、その甲斐無く、翔は綾を挑発し続ける。
「大体寂しそうな~っつーけど、お前だって一緒だろうが。一昨日先輩に振られた癖に」
「え、そうなの?僕初耳だよ」
「うるせー馬鹿」
 顔を真っ赤にして怒鳴る綾。悠はと言うと、興味津々に彼女の顔を見るのみ、言葉は発しない。
「まー、こんな男女じゃねぇー」
 ニヤニヤとしながら、尚も翔は綾を煽った。
「黙れっ!」
 ゴンッ、といい音が橋の上に響いた。
「痛ぇっ!」
「蹴りじゃないだけまだマシだと思えっ。何なら蹴りも追加していいんだぞ?」
「冗談じゃねぇよ!……悠も見てるだけじゃなくて何か言ってくれよ!」
 唐突に話題を振られた悠であったが、ただ微笑しながら言葉を返す。
「うーん、今のはどう考えても翔が悪いからなぁ……」
「なっ……! こ、これが……これが四面楚歌って奴なのか……!」
「二面だけどね」
「そんな突っ込み要らねーよ、悠!」
 拳を握りしめて、翔は突っ込み返した。
 綾は翔の右隣へと並んだ。「寂しそうな人一名追加ー」と翔が呟くと、再び綾の鉄拳が飛んだ。その後で。
「で、寂しそうなお二人さんは、イブのこんな時間に何やってんだよ?」
「そういう綾は、どうしてこんな時間に?」
 質問を投げ返したのは、悠であった。
「アタシは、まぁクリスマスのバイトだ」
「いいよねぇ、もう進路決まってる奴は」
 ふてくされながら、翔は言った。
「そりゃ遅刻常習犯だったり、補習さぼったりするアンタ達が悪いんだよ」
「あれはさぼったんじゃないよ。ほぼ毎回空腹に襲われて仕方なく帰るだけだよ?」
「だからそれをさぼるって言うんだ、悠」
 深くため息を吐きながら、綾は悠に突っ込んだ。
「サンタクロースって奴が本当に居るなら、合格をくれないかねぇ……」
 ため息と共に、はき出すように翔が呟く。
「流石に形のない物は無理じゃないかな?」
「じゃあぁー入学用の書類とかはぁー」
「書類あっても合格してなきゃ意味ないだろ」
「くぅー……」
 がっくりと肩を落とす翔。その傍らで、綾が再び問いをくり返した。
「で……アンタ達こんな時間に何やってたワケ?」
「あ、僕は塾帰りに翔を見つけたから一緒にぼんやりしていただけかな」
「俺は黄昏れてただけだな」
「黄昏れてたって……やっぱり「寂しそうな」人じゃなくて「寂しい」人だったんだな」
「やっぱりって何だよおい」
「別にぃー」
 そう言い切った綾はニヤニヤとしていたかと思うと、川に向かって唐突に叫んだ。
「……サンタクロースが本当に居たら、かぁ……。……サンタさぁーん、格好いい彼氏くれえぇぇ!」
 それに釣られるように、翔も叫んだ。
「サンタクロース様あぁぁー、可愛くて性格のいい彼女をくださぁい!」
「どっちも募集中ならいっそ付き合っちゃえばいいのに」
 ぼそっと、悠が呟く。
「こいつは条件満たしてないからパスだ」
「こんな暴力男女お断りだ」
「誰が暴力男女だとボケっ!」
 再び、綾の裏拳が飛んだ。その様子を愉快そうに見ながら、悠は言った。
「あはは、冗談だってば」
 お似合いだとは思うけどね、と彼は小さく呟いたが、それは二人には聞こえてなかったらしく突っ込みは入らなかった。
 ちらり、と腕時計を見て、綾は言った。
「十時十五分か……とりあえずアタシは帰ろうかな」
「あ、じゃあ僕も便乗で」
「了解、気ぃつけて帰れよ」
「あれ、翔はまだ帰らないの?」
 不思議そうに悠が問うた。
「もう少し黄昏れてから帰る」
「寂しい人お疲れ様」
 そう言って、ニヤリと意地の悪い笑みを向ける綾。
「うるせー! いいんだよ俺は家が近いから!」
「もう否定はしないんだね」
「そこも黙れ」
 綾が、自転車にまたがり、二人に向かって言った。
「んじゃ、次に会った時まで、会わなければ初詣まで……んじゃー!」
 二人に向かい手を振って、彼女は自転車を漕ぎ走り去った。
「……本当に、嵐みたいな女だな……」
 走り去った先を見つめ、翔は小さく呟いた。
「じゃ、僕も行くよ」
「おう、また元旦にな」
「うんうん、じゃあね、翔。風邪引かないようにね」
「あぁ、じゃあなー」
 そう言って、悠もまた自転車に飛び乗り走り去った。それを見つめた後。
「さて……」
 ふぅ、と彼は手摺りから体を離す。
 ――サンタクロース様、サンタクロース様、もし本当に居るならば……願わくばアイツらと何時までも仲良くやれる未来を。
 彼は空に浮かぶ月を見つめていたかと思うと、二人が去った方とは反対方向へと、歩みを進め始めた。

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「お前振られたばっかりだっけ→氏ね」のやりとりが書きたかっただけなんですごめんなさい。後書いていて耳が痛かったです、受験の話とか。耳じゃないだろとかいう突っ込みは受け付けません。
 結局ギャグの練習みたいな話になってしもた……('A`)
 ちなみに文字数は3000字弱。び、微妙……!

 こういう小説は書きやすいんだけど、自分の本当に書きたい小説では無いというか……うーん。個人的には一人称で心境描写なんかが凄く繊細な小説が書けるようになりたい。しかし現実がかなーりかけ離れているという悲しさ。


 実は明日の分は何も考えていません、どうしよう……。

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