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カゴドリとツバメ

2009.11.19 03:50 | オリジナル::書き捨て

「かーごめかごめ、篭の中の鳥はー――」
「――いついつ出やるー」
 窓の外の、コンクリートの壁に向かって歌う少女の歌に、知らない誰かが合わせて歌った。
 長い濡烏の髪と、真っ黒で大きな瞳。市松人形を彷彿とさせるその少女の視線の先に、突如娘が現れた。ふんわりとした金の髪に、真っ白のワンピース。ある意味、少女と真逆の容姿。
 口を閉じてじっと娘を見つめた少女は、淡々とした口調で彼女に言った。
「もう少し、気を付けた方がいいわ」
「何が?」
 歌うことを止め、不思議そうに娘は問う。
 そんな彼女から視線を外すことなく、無機物的に少女は答えた。
「この世界では、人間は空を飛ばない」
「あら」
 其処は、二階の窓際。娘は確かに、宙に浮いていた。
 娘は少し驚いた様に、少女に問うた。
「貴方――もしかして、「カゴドリ」? それとも、「ツバメ」?」
「なあに、それ」
 あら、と再び少女は呟いて、そして少し黙り込んだ。
 かと思うと。
「確か……流産の歌、だったわよね、さっきの歌」
「そういう説もあるらしいわ」
 でも、と少女は言葉を続けて。
「私にとっては、違う歌に聞こえるの」
「――「世界」という檻に囚われた、平凡な一人の少女の話?」
「よく解ったわね」
「やっぱり貴方、「カゴドリ」なのよ」
 これまで無表情だった少女が、少し困った様な顔をして。
「詳しいことは、よく解らないわ」
「だって貴方、私を見ても全く驚かなかったじゃない」
「……聞いたことがあるの」
 控えめに、少女は呟く。
「私達の住む世界の外側に、もっと大きな世界が広がっているって」
「誰に聞いたの?」
「お友達に」
 そう……と娘は小さく呟く。
「……ねえ」
 今度は、少女が娘に問い掛ける。
「貴方は、その「外の世界」からやってきたの?」
「ええ、そうよ」
「外の世界は、どんな場所なの?」
 ほんの少しだけ、少女の瞳に光が宿った。
 そうね……と娘は少し考えて。
「例えるなら――海、かしら」
「海……?」
「そう、海」
 それを聞いて、眉を潜めて少女は言った。
「やっぱりよく解らないわ」
「仕方がないわ……口で説明するのは難しいもの」
「ねえ。……私も、その外の世界に行くことは出来るの?」
 娘の顔が、一瞬曇った。
「……難しいわ」
「そう……」
「「カゴドリ」が、外の世界を飛び交う「ツバメ」になるには、切っ掛けが必要なんだけど……でも、残念だけど私にはその「切っ掛け」を作る力がないわ」
 でも、と娘はぎこちなく微笑む。
「私が此処に来ることが出来たと言うことは、誰か……そういう力を持った「ツバメ」が来るかもしれない。それに、「糸」は何もしなくても切れる事もあるらしいの。だから……何時か、出られるかもしれない」
 ただ、と娘は更に言い加えて。
「一度外へ出てしまえば、滅多な事では戻ってはこられないけれど……」
「それでも――何時か、行ってみたいな」
 ずっと黙って耳を傾けていた少女が、独り言の様に呟いた。
「ええ……出られれば良いわね。良いことばかりじゃないけれど、外の世界もそれなりには良いところだから」
 じゃあ、と娘は一度伸びをして。
「私、この世界を観光してくるわ。忠告、ありがとうね」
 少女は、唯無言で頷く。
「何時か……本当に、外の世界で逢えるといいわね」
 そう言い残して、少女は一瞬で姿を消した。
 それを、少女は娘が現れた時と同じ様に、唯無表情に見つめていた。

 窓の外を横切った、二匹のツバメ。
 それはまるで、少女の世界を切り開く小太刀の様で。
 少女の瞳には、いつの間にかはっきりとした光が宿っていた。


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(反転)) 「それ」が見えるだけの者と、それを飛び越える力を持った者との「壁」。昨日の就寝前にぱっと脳内に湧いてきた場面、偶には会話メインの文章を。

溶けるモノ

2009.09.12 03:45 | オリジナル::書き捨て

 この不安定な空間で、また一人、隣人が「溶けた」。
 嗚呼、これで何人目。「溶けた」隣人は既に「隣人だった者」ではなく唯の「一だったモノ」に過ぎない。「一」の集合体をいちいち記憶する事など、それらと同じく「一だったモノ」になりゆく私には、到底不可能。記憶しておこうという努力をする気にもなれない。そんな事に力を傾けるよりも、もっと傾けるべき事はごまんとあるのだ。
 所詮、流れゆくこの場所では我々は泡沫に過ぎないのだ。生まれては消え、生まれては消え。溶けぬ者は哀れな目で我々を見るが、それは己が溶けぬ者であるからこその行動だ。
 だが、時折私は、彼らを逆に哀れな目で見つめてやっている。私は、彼らの求めるモノのヒントが、此処にある事を知っている。「それ」を探して此処にやってくる者は、私の目には滑稽に映った。
 そもそも、確定出来ぬ「答えの存在」を知ってしまった事自体が哀れなのだ。
 だが、その思考こそが、爆弾を抱えた「溶けるモノ」特有の思考、それに気付く度に私は一瞬、溶けぬ者が羨ましくなった。


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(反転)あんまり何も考えずに打ち込んだシリーズ。つまりは、ないものねだり。

水面

2009.08.18 04:17 | オリジナル::書き捨て

 夜風、輝き、水面の揺らぎ。
 おちていきたかった。この深き湖の底へと。
 太陽が照っている訳でも無いのに、この体は熱を帯びていた。少しでも気を緩めると世界が歪み、半回転しそうな、そんな不可思議な感覚。無意識に支配されてしまうと、ふらりと身を投げ出してしまいそうな、そんな浮遊感。ゆらり、ゆらりと揺れながら、私は唯水面を見ていた。まるで死人であるかの様な目をしているであろうことは、私自身容易に想像する事が出来た。今の私のような人間を何人も見てきたし、何より私自身がそのような目で水面を見ているという「感覚」を覚えていた。決して表に出ることのない、深層の己自身。まるで、「私」が解離しているような感覚。そう、「――」という器の中で「私」という存在が他人事の様に世界を観ている様な……。
 不安定な体を屈め、水面を覗き込んだ。月光を反射してきらきらと不規則に輝く水面。ささやかな湖の“鳴き声”。
 ――堕ちて逝こうか、と誰かが小さく囁いた。


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(反転)あんまり何も考えずに打ち込んだシリーズ第1弾。リアルノート、携帯も含めるとこの手の文章はかなりあったりする。つまり短編すら書けない病。何にも考えずに描くと同じ様な登場人物、同じ様なシチュ、同じ様な表現になるけど、描けないよりマシだとここ数年で解った。最近のマイブームは単語三つから始めることっぽい。

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